★================================================================★

      「品性・経営・人生」 Vol.194  2009/10/12 読者数 519名
★================================================================★

清水英雄の「ありがとう経営」(2)

筆者がはじめて清水英雄氏(1946−)にお会いしたのは、いまから20
年ほども前のことであった。名刺を交換して驚いた。今でこそ珍しくはなく
なったが、氏の名刺は3つ折りの「6ページ」になっており、1ページ目は
普通の名刺だが、2ページ目には「人生七変化」という詩(?)が書いてあ
る。自作の「詩」だという。


「人生七変化」

  自分が変われば 相手が変わる

  相手が変われば 心が変わる

  心が変われば  言葉が変わる

  言葉が変われば 態度が変わる

  態度が変われば 人生が変わる

  人生が変われば 運命が変わる

その他、教訓的な詩が並ぶ名刺をもらい、筆者は思わず尋ねた。「どうして、
こんな考え方が?」と。すると、氏は次のように答えた。

「私は子供の頃から大病を何度もしました。何度も死にかけました。しかし、
その度に親や先生、お医者さん、先輩のおかげで奇跡的に助けられ、ここま
で来ました。多くの人に助けられたから、ここまで生きてくることができた
のです。ですから、感謝するのは私にとって自然なことなのです」と。

その時、清水氏はそう答えてくれ、筆者もいったんは納得した。しかし、筆
者は「そんなはずはない。少なくとも、それだけではないはずだ」と思うよ
うになった。

なぜならば、我々はすべて膨大な数の先人、先祖のおかげで「生かされてい
る」。しかし、ほとんどの人は、そんなことを考えもせず、「あたりまえ」
とみなす。それどころか、他と比べて「自分にももっとくれ」と要求する人
があまりにも多い。

大病をする人はたくさんいる。しかし、そういう人たちがすべて強い感謝の
心を持つかというと決してそうではない。

清水氏の徹底的な「感謝の心」の源は大病だけに帰すべきではない。そう思っ
て、前号で紹介した、氏の『ありがとう』という詩集を読んでいると、見え
てくるものがある。たとえば、次の詩を見てみよう。


「おやじの遺(意)産』

  他界した父は 呉服屋だった

  小学校の低学年から

  私はよく 店を手伝った


  余りぎれを売っていると

  お客様が

  「ボクえらいわねェ 一枚買ってあげようね」


  と ボクの努力を 買ってくれた

  父は いつも

  お客様のおかげだ

  お客様のおかげだ と

  繰り返し しつっこいぐらいに

  いっていた


  だから

  学校にも 遊びにも 買い物にも

  すべて何でも

  お客様のおかげで

  行くことができる


  そういうことが

  理屈でなく

  実感として

  体でわかっている

  体にしみこんでいる


  こうした 思想が

  おやじが私に残してくれた


  最高にして最大の

  遺(意)産だ


  いつまでも 朽ちることなく

  心に残る すばらしい

  親父の遺(意)産


  おとうさん ありがとう

  おとうさん ありがとう

こういった詩を読んでいると、清水氏の感謝の心とは親から頂いたものだと
分かってくる。

権利ばかりが声高に主張されている今日、人々から感謝の心が、どんどん薄
れていく。その中でも脈々と生きながらえる感謝心は親から伝えられたもの
であろう。

そして、その親は誰から感謝の心を受け継いだのだろうか?

きっと、その親からであろう。
そして、その親は?

こう考えていくと、現在の自分に多少でも感謝の心があることは何代にもわ
たる親・先祖のおかげだと理解できる。

現実に若い社員に感謝の心がなく、その教育に苦心している経営者は多い。
しかも、その傾向は年々強まっている。

廣池千九郎は「義務先行の原理」を強調する。『品性資本の経営』(モラロ
ジー研究所刊)133ページに次の記載がある。

“いかなる人も会社も、自然、社会、国家、先人等からの有形無形の多大な
恩恵によって生かされ、生きている。にもかかわらず、その恵みと恩を十分
に活かし切っていない。義務先行の原理では、この恩恵を「道徳的負債」と
考える。

そして、恩恵に感謝するとともに、積極的、意欲的かつ自発的に、この負債
を返済しようとする。すなわち、恵みに応え、善を増やそうとするすること
であり、それを義務先行と呼ぶ。”

折にふれ、日本的経営なる言葉が使われる。その内容は実に多様である。し
かし、日本的経営の本質・特質は「感謝」から出発するものではなかろうか?

そう考えると、清水氏の「感謝経営論」はまさに日本的経営論の本質を突い
ていると言えよう。

+-+-+-+-「品性・経営・人生」メールマガジン -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

★発行者:田原道夫
★登録・登録解除:http://www.hinkeijin.jp
★ご意見ご感想:「品性・経営・人生」メールマガジン
  メールアドレス:m-tahara@hinkeijin.jp

掲載された記事を許可なく転載することを禁じます。
 Copyright(c) 2007-2009 田原道夫 All rights reserved.
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-